アフリカとの出会い45

  ‘Sukuma Wiki(スクマウィキ)’な毎日
   

  アフリカンコネクション 竹田悦子
 
 Sukuma Wiki「スクマウィキ」という名前の野菜がケニアにはある。

 Sukuma(スクマ)というのはスワヒリ語の動詞で、「押す」「なんとか持ち越す」などの意味がある。Wiki「ウィキ」とは、英語のweek(週)からきており、Sukuma Wikiを意訳すると「一週間をなんとか頑張って乗り越える」という意味の野菜である。どうしてこんな名前がついているのだろう?とずっと不思議に思っていた。今年の夏、ケニアから持ち帰ってきたスクマウィキの種を自宅の庭に植えてみた。そして自分で育ててみて、この野菜の名前の訳がなんとなく分かったような気がしている。

 3ヶ月ほどで立派な葉が大きく成長し、食べられるようになった。一番大きな下の葉を採って食べても、次々に上の葉が広がってくる。小さなスペースで所狭しと植えても、すくすくと育ち、あっという間に収穫できるようになる。種は格安な上、少々の水さえ与えれば育ち、どんどん収穫出来る。

 ケニアにはトマト、キャベツ、じゃが芋、ニンジン、ほうれん草などがあるが、市場では少し高価だ。しかし、このスクマウィキはどこにいっても見かけるありふれた野菜で非常に安い。ほうれん草のように束ねられた大束でも10円ほどだ。自分で育ててもいいし、市場で買っても安い。何とか次の週(ウィキ)を生き延びる(スクマ)ための野菜。

 私がいた孤児院でも毎週1,2回はこの野菜がメニューに入っていた。スクマを細かく棒状に切ってトマトや玉ねぎと一緒に油で炒める。最後に塩を少しかける。味は苦味が少しあるが、とてもおいしい炒め物料理だ。これに唐とうもろこしの粉をお湯で練ったウガリという主食があれば立派な食事だ。スラムの中に建つ家の前には、このスクマが所狭しと植えられている。

 孤児院の食事メニューには、このスクマがよく出てくる。

 ぎりぎりの食生活を支える「スクマウィキ」という野菜は、栄養も満点で、沢山の人の生活を経済的に支えている。
 
 実は、日本では「ケール」(注)と呼ばれ、青汁材料として知られている。それにしても、ケニアの人はいろいろな物に対して名前の付け方が面白い。Sukuma Wiki (来週も持ち越そう!)とはなんて面白い名前なんだろう。

注:ケールは、地中海沿岸が原産でキャベツの原種に近く、温暖な気候であれば一年中栽培可能で収穫量も多い。キャベツとは違い、結球しない。栄養に富み、ビタミンの含有量は緑黄色野菜の中でも多く、青汁の材料として利用される。(フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」 より)


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